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第2回 BIM情報交換会を振り返って

更新日:2023年10月19日

 6/21(水)に、株式会社空間構想にて「第2回BIM情報交換会」を主催しました。

 本会には東京大学生産技術研究所特任准教授/株式会社竹中工務店設計本部コンピュテーショナルデザイングループ長の石澤宰先生にご登壇いただきました。オンラインを含めると参加者は70名にも登り、聴講者のみなさまの関心の高さが伺えました。

 前半部分では、竹中工務店でのプロジェクトにおける先駆的な試みについてのお話をしていただきました。失敗が許されない重要なプロジェクトにおいて新しい技術を試行錯誤しながら取り入れ新たな価値をうみだすさまは、ものごとの可能性、また逆に限界を知るためには挑戦が必要であると痛感させられる内容で、日本の建設界をリードする会社といえど、その環境はこのような果敢に挑戦を行う人の存在によって支えられているのだ、と強く思いました。また「BIMを利用した先進事例」という一見ドライな事柄の背後に、個々人の思いを感じさせる語り口には、石澤先生の熱い人間性を見た気がします。

 一方後半の内容はBIMというソフトウェアの裏側にいる人間に目を向けさせる、大変興味深いものでした。特に、職能としてCADオペレータにきちんと目を向けることは、今後の建築業界を考える上で欠かせない議論であると思います。それは人材不足の問題においてはもちろんですが、それ以上に、どれだけ技術が発展しても、建築を建てたがるのは人間なのだ、ということが根幹にあるのではないでしょうか。

 こういう議論をする際、私たちは、中立的であろうとし、技術やデータなど人間から離れたものに目がいってしまいがちです。しかしながら、石澤先生も述べられたように、データはそこに転がっているだけでは意味をなしません。データは活用しようとする人間の意志のもと初めて価値を発揮するのであり、そういうことにもっと意識的になる必要がある、とお話を伺い改めて感じさせられました。そして、技術者としての視点と研究者としての視点を併せ持つ石澤先生のユニークな切り口が、BIMの実用的な側面だけでなく”ツールを扱う人間と向きあう”という大切な視点を提示してくれることは、まさにご本人が提唱されているような自己内多様性の持つ力を指し示しているのではないでしょうか。(ご自身の情熱を注ぎ込むアイドルの価値観を研究の専門に取り組むという感性も、大いに一役買っていると思います)

 ご講演全体を通じて、デジタル化=効率化ではなく、技術と人間との接点の中で新たな付加価値を探究していく姿勢が全ての実務者、研究者に必要なのだと考えさせられました。また人間の所在が重要であるからこそ、業界全体で個々人の知見を分かち合うことの重要性を感じ、本情報交換会を有意義なものにしていく使命感を感じています。

 この場をお借りして、貴重なご講演をいただいたことを改めてお礼いたします。


 日本BIM標準機構株式会社 代表取締役 田島理奈





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